大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(オ)291 判決

主 文

本件上告を却下する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人(原告)Aの上告理由は、末尾に添えた別紙記載の通りである。

(一)本件は行政裁判所時代から持ち越しの事件ゆえ、その当初からの経過を振

り返つて見たい。昭和八年三月一三日D収用審査会は、上告人の所有地を収用する

とともに、その地上にある椿を収用の時期たる同月一七日までに移転すべき旨を裁

決し、上告人がそれに従わなかつたので、長崎県知事は土地収用法第七三条第一項

によつて移転を代執行し、同法第七〇条第二項によつて代執行費用一〇円五〇銭の

納付を命じたところ、上告人がそれを納付しなかつたので、右代執行費用、督促手

数料、延滞金合計一一円七一銭を徴収するにめ、昭和九年五月二一日上告人に対し

差押処分をしたので、上告人は右代執行費用の賦課および差押処分の無効確認を求

めて昭和九年七月九日行政裁判所に本訴を提起したのである。そしてそのまま結審

に至らなかつたところ、昭和二二年五月三日裁判所法が施行され、同法施行法第二

条第二項によつて本訴の提起は東京高等裁判所にしたものとみなされることになつ

たのである。

(二)ところが原審は、土地収用法第七四条は義務者が代執行の費用を任意に納

付しないときは国税滞納処分の例により徴収する旨を規定しているがその徴収なら

びに滞納処分については同法中行政訴訟の提起を許した規定がない、また右代執行

の費用は明治二三年法律第一〇六号第一号の手数料に該当せず、またその滞納処分

は同法第二号に該当せず、その他日本国憲法施行前の法令中かかる事項について行

政訴訟の提起を許した規定がない、との理由で本訴を却下した。けだし裁判所法施

行令第四条第二項により東京高等裁判所は従前行政裁判所に行政訴訟を提起するこ

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との許されていた事項について裁判権を有するものと規定されているからである。

(三)上告理由は第一点から第五点にわたつて前掲(二)の判旨を攻撃するので

あつて、代執行費用の滞納処分に関する事件が明治二三年法律第一〇六号第二号に

含まれないかについては問題があり得るが、昭和二三年法律第一四九号民事訴訟法

の一部を改正する法律附則第六条によれば、東京高等裁判所が裁判所法施行令第四

条の規定によつて裁判権を有する事件についてした終局判決については民事訴訟法

第四〇九号の二が準用され、同条においては憲法違反を理由としなければ最高裁判

所に上告できないことになつている。そこで本件上告が憲法違反を理由とするか否

かを考えて見ると、上告状は「原判決は法令の解釈を誤り憲法に適合しないと認め

られるを以て」と言い、上告理由書には「原判決も叙上の趣旨に於て法律に違反し

究極に於て日本国憲法に適合せざるものと確信する」とあるが、判決の如何なる点

が憲法第何条の規定に違反するのかという具体的の議論でなく、単に法令解釈の見

解を異にする旨の主張にほかならないのであつて、結局本件上告は憲法違反を理由

とするものとは認め難い。

よつて、本件上告は不適法としてこれを却下すべきものとし、上告費用の点につ

き民事訴訟法第九五条第八九条により主文の通り判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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